EURO SELLERの為替・投資戦略ブログ

2005年6月の欧州憲法否決の際にユーロを売りまくった管理人の【新】為替・投資日記ブログです。くれぐれも投資行動は自己責任でお願いします。

公共負債に関するBISの論文について

グローバルなマネーの流れを考慮するのにBIS(Bank for International Settlements=国際決済銀行)の論文は相変わらず小気味が良いです。今回紹介する論文は

BIS Papers No 300
The future of public debt: prospects and implications

(公共負債の将来:見通しと事実から引き出されること)

なんともタイムリーですね。さらっと流し読みすると,

【序論】
■ 先進国の高齢化による公的負債の増加は現在の予測では十分に認識されているとは言えない
■ 日本の財政赤字がGDPの150%であるという例を引き合いに出して,それでも国が借金を返せると思われていることが大事である
■ いくつかの例外的な国々を除いて国の財政危機は実際より煽られる傾向があり,債券トレーダーの近視眼的なトレードもイールドの上昇に影響する
■ どの程度の財政赤字になるかは国により異なるが,だからと言って放漫財政が許されるわけはなく,財政赤字より黒字のほうが低金利と経済成長を維持できる
■ 適切に公共負債をコントロールしないと,中長期の国債のイールドが上がるだけでなく各国の景気回復にもリスクが生じる
■ 退職する世代が増えていくので,景気回復と公共負債の縮小をうまくバランスさせることが重要である

【Section 2やSection 3の図や表】
P6のGraph2:
日本の高齢化を象徴的に表すグラフですし,ギリシャの高齢者に対する政府費用もGDPに対して異常に高いですね。要するに経済成長に見合った以上の福祉をギリシャ国民が要求しているということです。

P10のGraph4:
各国の負債のGDP比が示されていますが,2040年で600%に達してしまうのは日本だけですし,最も高齢者費用を出さないケースでも400%に達してしまいます。

P11のTable3:
プライマリバランスを維持していくための費用のGDP比が高いのはアイルランド,英国,日本がワースト3
です。とても厳しい将来が待っていることを認識すべきでしょう。

P13のGraph6:
ギリシャのCDSスプレッドが一見して高いことがわかります。日本は政府負債の割合が高いのに市場からは安心されています。債券市場が主に国内投資家によって運用されているからでしょうか。政府の歳入割合が少ない国は米国,スイス,日本がワースト3で日本の将来の増税が予想されます。

【結論】
■ 先進国は高齢化が進むので,将来の公共負債の大きさは名目よりさらに大きく見積もる必要がある。歳入のあてのない負債が増加するのは何としても避けなければならない。歳入は減る傾向がある一方で支出は増加する傾向があるので,経済成長により歳入を増やさないとますます赤字脱却は難しくなる。
■ 今回の(名指しを避けているもののギリシャなどの)いくつかの国に対するスプレッドのタイトニングからは,もはや債券市場は国債をローリスクとは考えていないことがわかる。国債のデフォルトリスクは負債額によって上昇する一方で,国民の貯蓄率や政府歳入のGDP比が高いことによって下降する。また,国債の購入に外国資本の割合が高いほどスプレッドは広がる傾向がある。さらには,(明らかに日本のことを言っていると思いますが)国内要因でスプレッドが広がらないために脆弱な財政システムに甘んじる傾向もある
公共負債の増加は資本の蓄積や生産性の向上や長期の潜在成長率を低下させるリスクもある。直接的な証拠はないが,負債の増加に伴いそれは非線形に利いてきて負債のGDP比が100%に近づくにつれて顕著な悪影響をもたらす。
■ 財政収支のインバランスは明確に将来の金融システムの安定にも影響を与える。インフレ率を上昇させる要因は,中央銀行の赤字国債の直接買い付けおよび高インフレを通して政府負債を実質的に軽減しようとする試みの2つがある。今のところはそのような要因が顕著だとは思われない。(日本はあやしい?)

【おまけ】
BIS PapersおよびBIS Working Papersにはほかにも興味深い論文があります。過去の当ブログでも以下のエントリで取り上げました。

1998年以後の世界マネーの流れのエントリの図
世界の金融政策の各国中銀の政策の変化
中央銀行のガバナンスについてのまとめ論文
当選議員の方に読んでもらいたいBIS Papersの各論文 などは印象的でした。

ECBは政策金利を1.0%で据え置き…ギリシャ危機に対しては打つ手なし

Trichet Resists Calls to Buy Bonds, Urges Faster Deficit Cuts

ECBは12回連続金利据え置きでした。今回は今週に入ってギリシャ国債のCDSスプレッドが700BPSレベルに上がりましたが,

ギリシャに関しては「国債の買い取りに関しては協議していない」と言明し,「財政赤字を削減することが急務である」とも述べています。

つまり,さすがにECB自身が主導権を取って積極的にギリシャを支援するとは言えず,新たなスキームについては欧州各国協議待ちの姿勢しか示せませんでした。経済統合しかできないEMUの欠点が再度クローズアップされたと言えます。当然のことながらユーロドルは1.27ドルを割りましたね。1.30ドルを割ってからの今週の動きはフリーフォールと言えましょう。トリシェECB総裁も何もできなくて歯がゆいことでしょう。


4月ISM製造業景気指数はまたも予想を上回り60.4まで上昇

Manufacturing in U.S. Grew at Fastest Pace Since 2004 (Update2)

4月ISM製造業景気指数: 60.4 (予測:60.0,前月:59.6)



4月のISM製造業景気指数は3月の指数から0.8ポイント増加し60.4という2004年6月以来の高い水準となりました。4月フィラデルフィア連銀景況指数を観察していれば大体傾向はわかるのですが,New Orders, Productionが60台半ばまで増加し大きく総合指数をけん引しました。DeliveriesやInventoriesがマイナスですが,これは逆に供給の伸びより需要の伸びの方が大きいことを表しています。反面,輸出指数は反落しており,最悪期を脱した米国経済は輸出に頼らなくても内需拡大で回復していることがうががえます。持続可能な景気拡大局面がさらに本格化している証拠と言えるでしょう。

この状況でユーロドルは早くも今週の展望での下値予測をブレイクして,1.31ドル台に再突入です。現在の相場のトレンドでは,金曜日の雇用統計の数値を何らかの言い訳にしてユーロをさらに売ってくる展開も予想しなければなりませんが,まずは先週の安値1.3114ドルを大きく割るかどうかにはぜひ注目したいと思います。

なお,記事では製造業の回復はユーロもオーストラリアも同じであるとレポートされていて,日本だけが取り残されていないことを願うばかりです。

ドル円・ユーロドル・ドルスイスの展望【2010/05/03の週の展望】

先週はギリシャ政府のECBおよびIMFによる救済額が決定した週でしたので,当然のことながらユーロの当面のセリングクライマックスの週でした。一方で,米2010年第1四半期GDPなどは個人消費が強く,欧州の経済の落ち込みや信用リスクとは対照的な結果でした。為替市場はドル円は大きな変化がなく米経済の強さは織り込み済みだった印象でしたが,ユーロドルのほうは一時1.31ドル台前半まで下落しました。ギリシャ救済額の決定を週明けすぐに行うとかすれば週の前半に大きく下落するのが防げたと思うのですが船頭が多いとなかなか迅速な決定ができないですね。原油価格は週前半は81ドル台まで下落しましたが,週末にはメキシコ湾岸のオイル流出事故の被害拡大などもあり,86ドル台まで再上昇しました。一方,金価格は火曜日にはいったん1146ドル台まで下落しましたが,一時1181ドルを越えた後に終値でも1180ドル直下まで上昇して引けました。欧州通貨の信認問題から「通貨から金への逃避」というのは一部で実際に起きているようです。



ドル円は,予想が94.70円-92.90円で,実際は94.580円-92.810円(終値93.930円)でした。上限は約10PIPSドル高方向の誤差で,下限も約10PIPSドル高方向の誤差でした。テクニカル的に見た予測が的中するときはたいていその通貨ペアのボラが少ない時です。しかし,こういう週ばかりではありませんので気を引き締める必要があります。GWが終わると旅行者がドルを円に換金するというアノマリは今年はどうでしょうか。日本の景気があまり良くないので極端な円高にはならないと思います。とはいえ,先週よりはドルが売られてもおかしくありません。下限については,先々週の92円台割れをある程度想定しておきましょう。一方,上限については94円台後半の蓋はトレンドが発生していませんのでまだ外れそうにありません。よって,今週の上値は94.80円程度と予測し,下値は91.80円程度と予測します。



ユーロドルは,予想が1.3550ドル-1.3280ドルで,実際は1.34150ドル-1.31140ドル(終値1.33130ドル)でした。上限は約140PIPSドル安方向に外し,下限は約170PIPSドル安方向に外しました。上も下も大外れでユーロ売りのトレンドがどこまでも止まりませんでした。ギリシャ救済関連がいろいろ決まっても,救済決定・救済額決定・救済実施と小出しにするのは相場的には思惑を生みやすいですしユーロにとっては不利な展開です。上限については,週末の反転も戻り半ばで1.34ドルの蓋はまだ外れないと考えています。一方,下限については先週ほどの下落はいったん止まると考えており上昇中のロング・ショートの均衡状況からは1.32ドル台前半でのサポートが推定されます。よって,今週の上値は1.3390ドル程度と予測し,下値は1.3220ドル程度と予測します。



ドルスイスは,予想が1.0800フラン-1.0670フランで,実際は1.09230フラン-1.06990フラン(終値1.07610フラン)でした。上限は約120PIPSドル安方向に外しましたが,下限は約30PIPSドル安方向の誤差でした。1.09フラン台をつけての週末の反転下落は今回も相当な予想外の動きでした。逆にこれだけ高値を付けてくれると,今週の上値はそれ以下の範囲にとどまるということで予想がしやすいのです。上限については,3日連続の陰線の動きから1.08フラン台後半での戻り売りを予想しています。一方,下限については65日移動平均線の1.0684フランや日足一目均衡の雲の上限1.0665フランなどは心理的サポートとして大きな意味を持ちます。よって,今週の上値は1.0870フラン程度と予測し,下値は1.0670フラン程度と予測します。

今週の経済指標としては,3日月曜日には4月ISM製造業景気指数があります。このブログを継続して見ている人はわかると思いますが,この指標は総合判断では詳細なものの速報性ではフィラデルフィア連銀景況指数の景気判断に劣っているので相場の反応としては織り込み済みのことも多いのです。とはいえ定点観測ですので連休中ではありますがなんとかエントリを書く予定です。6日木曜日にはECBの政策金利発表があり,今回はトリシェECB総裁もギリシャ問題が収束の方向に向かっているのでノーコメントとは行かないでしょう。7日金曜日には4月米雇用統計がありますので,NFPのデータでポジティブサプライズがあるかどうかに注目しましょう。

もしかしたら木曜日・金曜日も休暇でまだ連休中と言う人もいるでしょうから,できるだけポジションを取るのは控えましょう。良い休暇をお過ごしください。

2010年第1四半期米GDPはほぼ予想通り堅調

U.S. Economy Expanded in First Quarter as Consumers Spent More

2010年1Q米実質GDP(前期比年率): 3.2% (予想:3.2%,前期:5.6%)
2010年1Q米個人消費: 3.6% (予想:3.3%,前期:1.6%)
2010年1Q米GDPデフレータ: 0.9% (予想:0.9%,前期:0.5%)

堅調なGDPが継続していますが,個人消費により引っ張られているのが顕著ですね。この個人消費の伸びは2007年第1四半期以来の高い伸びだそうです。雇用も拡大しているのでさらなる個人消費による景気の拡大は持続可能のようです。クリーブランド連銀のGDPの内訳チャートでもはっきりと個人消費の伸びが呈示されていました。

Please wait for Cleveland Fed data update

おまけ:そう言えば,前回2009年第4四半期のGDP(速報値)はブログに書き忘れたことに気づいたのでこれも並べておきましょう。

2009年4Q米実質GDP(前期比年率): 5.7% (予想:4.7%,前期:2.2%)
2009年4Q米個人消費: 2.0% (予想:1.8%,前期:2.8%)
2009年4Q米GDPデフレータ: 0.6% (予想:1.3%,前期:0.4%)

2009年第4四半期のGDPに対する個人消費の貢献度はいまいちであったと思います。それだけ,2010年第1四半期では個人消費の貢献度が顕著に見えます。なお記事にもある通り,この2009年第4四半期と2010年第1四半期を合わせた6か月でのGDPの伸びは2003年下半期以来の伸びだそうです。

***

これは世界中で回っているドル資金が欧州から引き揚げて米国内に還流するのも当然ですね。最近見ていないTICデータでもそのうち見ておきましょう。

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