「デフレ対策」論争についての雑感
最近ではTwitterやブログ上で日本経済の「デフレ対策」について大きな話題が提供されました。勝間和代氏の「まず、デフレを止めよう」提言に対して池田信夫氏が噛み付いたのです。いわゆる「勝池(デフレ対策)論争」と言われるものです。
勝間和代氏のためのマクロ経済学入門
「勝間氏は自分の領分だけで勝負したほうが良い」とか,「池田氏はいつも大人気ない」とかネットでは賛否両論ですが,冷静に両者の主張を読んだ限りでは,それぞれの主張がかみ合っていない気がします。
勝間氏の論点は主に金融政策にあるのではなく,日銀の(政府が発行した)赤字国債買取りにより,公共投資(公共事業なのか新産業育成なのかは分からないが…)のための資金を提供させるといういわゆるケインズ政策によるデフレ脱却のことのようです。
一方,池田氏の論点はゼロ金利下における金融政策について述べており,日銀の(金融市場に存在する)市場国債買取りいわゆる非伝統的金融政策ではデフレ脱却はできないと言っているのです。
対象としている国債がそもそも違っているのですから永遠に平行線ですね。
「勝間氏の提言」の主に財政出動に対する正面からの突破は,
■ 日本がGDP比で過剰な財政大赤字である現在,これ以上インフレが起きるほど国債を発行してどうするという財政破綻の議論
■ ケインズ政策で「デフレ脱出」をすると,オーバーシュートがありインフレ期待が暴走して「ハイパーインフレ」の脅威が存在するという議論
の2点で攻めるべきでしょう。この2点に限った議論から言えば,各国中銀が取っているインフレターゲット政策のゼロインフレ下からの適用(いわゆるリフレ政策)の学問的立証とは無関係に,私は「勝間氏の提言」を現状の日本に適用できるとは思いません。
***
【6年前の非伝統的金融政策についての認識】
翻って,私にはリフレ派の人たちとも話しているのですが,ゼロ金利下における非伝統的金融政策になんらかの効果があると言う点では一定の合意ができていると思います。リフレ派の人はデフレ下の日銀政策を批判する人が多いですが,驚くべきことに以下の見解は日銀首脳から出た言葉です。
(問)総裁が、金融緩和の波及メカニズムという点に着目される背景として、おそらく、この2年間進めてきた国債購入を柱とする資金供給では、なかなか実体経済に資金が流れにくい状況になっているという問題意識があるかと思う。そうなると今後、いわゆる長期国債買い増しを軸に市場に資金を供給していく手法とは、徐々に一線を画していくというご意向なのか。
(答)従来からも効果が著しく出ている部分がある。やはり、金融市場の安定化効果というのは非常に大きくあったというふうに思う。ショックが起こった場合に、金融市場で不安感が増幅するというような悪影響は完全に遮断していたというふうに思う。実体経済には全く良い影響がなかったかというと、そうではない。デフレ的状況がずっと続いているが、物価と経済のシュリンク(収縮)という循環が、いわばデフレ・スパイラルといったかたちで目に見えて増幅していくというふうな、悪い動きを目下のところは阻止している。従って、実体経済に対してもプラスの影響はやはりはっきり持っていると思うが、我々の目指すところはより積極的なことである。さらにプラスの効果を出していきたい──マネーサプライに対してもプラスの効果があり、実体経済もよりダイナミックなものにしていくという、そこのところにまで波及効果を及ぼしていきたい、そこに挑戦していきたい──という意味であって、従来の延長線上の一つのエボリューション(進化)を図りたいということである。
(福井俊彦)政策委員会議長記者会見要旨 (2003年3月25日)
後半はですね,リフレ願望と言うかいろいろ英語も交えて特徴がありますけど福井新総裁らしさを出しながら頑張った発言をしていると思います。(後年にゼロ金利解除および利上げをしたことには賛否があるものの…)
勝間和代氏のためのマクロ経済学入門
「勝間氏は自分の領分だけで勝負したほうが良い」とか,「池田氏はいつも大人気ない」とかネットでは賛否両論ですが,冷静に両者の主張を読んだ限りでは,それぞれの主張がかみ合っていない気がします。
勝間氏の論点は主に金融政策にあるのではなく,日銀の(政府が発行した)赤字国債買取りにより,公共投資(公共事業なのか新産業育成なのかは分からないが…)のための資金を提供させるといういわゆるケインズ政策によるデフレ脱却のことのようです。
一方,池田氏の論点はゼロ金利下における金融政策について述べており,日銀の(金融市場に存在する)市場国債買取りいわゆる非伝統的金融政策ではデフレ脱却はできないと言っているのです。
対象としている国債がそもそも違っているのですから永遠に平行線ですね。
「勝間氏の提言」の主に財政出動に対する正面からの突破は,
■ 日本がGDP比で過剰な財政大赤字である現在,これ以上インフレが起きるほど国債を発行してどうするという財政破綻の議論
■ ケインズ政策で「デフレ脱出」をすると,オーバーシュートがありインフレ期待が暴走して「ハイパーインフレ」の脅威が存在するという議論
の2点で攻めるべきでしょう。この2点に限った議論から言えば,各国中銀が取っているインフレターゲット政策のゼロインフレ下からの適用(いわゆるリフレ政策)の学問的立証とは無関係に,私は「勝間氏の提言」を現状の日本に適用できるとは思いません。
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【6年前の非伝統的金融政策についての認識】
翻って,私にはリフレ派の人たちとも話しているのですが,ゼロ金利下における非伝統的金融政策になんらかの効果があると言う点では一定の合意ができていると思います。リフレ派の人はデフレ下の日銀政策を批判する人が多いですが,驚くべきことに以下の見解は日銀首脳から出た言葉です。
(問)総裁が、金融緩和の波及メカニズムという点に着目される背景として、おそらく、この2年間進めてきた国債購入を柱とする資金供給では、なかなか実体経済に資金が流れにくい状況になっているという問題意識があるかと思う。そうなると今後、いわゆる長期国債買い増しを軸に市場に資金を供給していく手法とは、徐々に一線を画していくというご意向なのか。
(答)従来からも効果が著しく出ている部分がある。やはり、金融市場の安定化効果というのは非常に大きくあったというふうに思う。ショックが起こった場合に、金融市場で不安感が増幅するというような悪影響は完全に遮断していたというふうに思う。実体経済には全く良い影響がなかったかというと、そうではない。デフレ的状況がずっと続いているが、物価と経済のシュリンク(収縮)という循環が、いわばデフレ・スパイラルといったかたちで目に見えて増幅していくというふうな、悪い動きを目下のところは阻止している。従って、実体経済に対してもプラスの影響はやはりはっきり持っていると思うが、我々の目指すところはより積極的なことである。さらにプラスの効果を出していきたい──マネーサプライに対してもプラスの効果があり、実体経済もよりダイナミックなものにしていくという、そこのところにまで波及効果を及ぼしていきたい、そこに挑戦していきたい──という意味であって、従来の延長線上の一つのエボリューション(進化)を図りたいということである。
(福井俊彦)政策委員会議長記者会見要旨 (2003年3月25日)
後半はですね,リフレ願望と言うかいろいろ英語も交えて特徴がありますけど福井新総裁らしさを出しながら頑張った発言をしていると思います。(後年にゼロ金利解除および利上げをしたことには賛否があるものの…)
コメント
福井総裁の過剰なコミュニケーション能力(演技力?)は功罪相半ばするかと。。緩和・引き締めの両サイドから叩かれる原因になったような気が。。
白川総裁の一貫したロジック、量的金融緩和=プルーデンスの方がすっきりするのですが、どうも”厳しい引き締め”と受け取る向きが多いようですね。
個人的には、”インフレ率のアンダシュート(デフレスパイラル)とオーバシュート(ハイパーインフレ)に対しては金融政策でダンピングできるけどそれ以外はリスク高いからやりません”というスタンスは結構安心できるのですが。
白川総裁の一貫したロジック、量的金融緩和=プルーデンスの方がすっきりするのですが、どうも”厳しい引き締め”と受け取る向きが多いようですね。
個人的には、”インフレ率のアンダシュート(デフレスパイラル)とオーバシュート(ハイパーインフレ)に対しては金融政策でダンピングできるけどそれ以外はリスク高いからやりません”というスタンスは結構安心できるのですが。
はてさて
議論がかみ合わないと仰いますが、勝間氏の発言に対して反論をかけたのは池田氏のほうであって、勝間氏は別に池田氏と論争しているわけではありません。
もし議論のベクトルがあわないということであれば、それは読み違えている池田氏の問題であるようには思いますが、どうでしょうか。
もし議論のベクトルがあわないということであれば、それは読み違えている池田氏の問題であるようには思いますが、どうでしょうか。
>39歳さん,どうもです。
先行きを過度に悲観するわけにも行きませんが,どんなときでも冷静さは必要ですね。
>クラじいさん,どうもです。
確かに福井さんはやりすぎの感があり,白川さんのほうが私も安心です。野次馬で見るのには福井総裁の記者会見のほうが楽しめましたが…
>「はてさて」と書かれた方,どうもです。
確かにかみ合わない点については,反論の仕方のほうに大きく依存しますね。とはいえ,両者ともそれぞれの目標にしたがって自分の意思を貫き通したのであり,もうそろそろ論争は終わると思います。
先行きを過度に悲観するわけにも行きませんが,どんなときでも冷静さは必要ですね。
>クラじいさん,どうもです。
確かに福井さんはやりすぎの感があり,白川さんのほうが私も安心です。野次馬で見るのには福井総裁の記者会見のほうが楽しめましたが…
>「はてさて」と書かれた方,どうもです。
確かにかみ合わない点については,反論の仕方のほうに大きく依存しますね。とはいえ,両者ともそれぞれの目標にしたがって自分の意思を貫き通したのであり,もうそろそろ論争は終わると思います。
デフレについて
デフレについて不安を覚えている経済素人です。
個人的には、国債買取という形にしろ、なんらかの形で資金をもっと市場に流して欲しいと思っています。ただ、日銀だけでは市中に流した後のお金の使い道まではコントロール出来ませんので、どこに流れていくのかを注意深く見守りたい気持ちもわかります。
勝間さんが主張する取り敢えずのデフレ脱却は、変化をもたらすという意味で賛成ですが、以下のコメントの内容についてわからなかったので、教えてください。
本文抜粋「各国中銀が取っているインフレターゲット政策のゼロインフレ下からの適用(いわゆるリフレ政策)の学問的立証とは無関係に,私は「勝間氏の提言」を現状の日本に適用できるとは思いません。 」
お願いします。
個人的には、国債買取という形にしろ、なんらかの形で資金をもっと市場に流して欲しいと思っています。ただ、日銀だけでは市中に流した後のお金の使い道まではコントロール出来ませんので、どこに流れていくのかを注意深く見守りたい気持ちもわかります。
勝間さんが主張する取り敢えずのデフレ脱却は、変化をもたらすという意味で賛成ですが、以下のコメントの内容についてわからなかったので、教えてください。
本文抜粋「各国中銀が取っているインフレターゲット政策のゼロインフレ下からの適用(いわゆるリフレ政策)の学問的立証とは無関係に,私は「勝間氏の提言」を現状の日本に適用できるとは思いません。 」
お願いします。
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単純なイメージとして、
>>日本がGDP比で過剰な財政大赤字である現在,これ以上インフレが起きるほど国債を
>>発行してどうするという財政破綻の議論
ここに賛成です。
ここまで財政赤字が増えてしまうまで、景気対策をやってきた現状が今なのですから、
日本の景気や生活レベルの巡航速度に対する目線を下げるべきだと思うのです。
現状よりも更に景気や生活レベルが悪化するかもしれませんが、
それでも予算=国債発行を縮小して、
後の世代へ残す重荷を減らす努力をすべきだと思っています。
景気にしても、生活レベルにしても、現状ですら背伸びした状態なのでは?
それが今の日本の実力なんだと思います。